魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
【1章】夜会と、心の声と、王太子

1.美味しい【悲しい】

「君を僕の補佐官として迎え入れたいんだ」

「え……?」


 それは他人の心が読めるはずのオティリエにとって、まったく思いがけないセリフだった。
 目の前の男性がこれからなにを言おうとしているのか、どうこたえるのが正解なのかまったくわからない。けれど彼はオティリエがどんな反応をしても許してくれそうな寛容な空気を醸し出している。オティリエはそっと身を乗り出した。


「補佐官、ですか? この私が?」

「そう。この家を出て、僕のために力を貸してほしい。どうだろう?」


 男性が優しく微笑む。オティリエの胸が高鳴った。


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