魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「ヴァーリック様――あまりイジメると、オティリエさんに嫌われますよ」


 と、エアニーが助け舟を出してくれる。ヴァーリックは「それは困るな」と笑いつつ、オティリエの頭をそっと撫でた。


「ごめんね、オティリエがあまりにも可愛くて」

「いえ……」


 だからそれが――と言いたくなるのをグッとこらえ、オティリエはパタパタと顔をあおぐ。ようやく落ち着いてきたところで、エアニー以外の補佐官たちと自己紹介を交わした。


「全員優しいから遠慮なく頼って。もしも困ったことがあったら、きちんと相談するんだよ。もちろん、相手は僕でも構わないし」

「ありがとうございます。そうさせていただきます」


 オティリエはそう返事をするが、極力ヴァーリックに負担をかけたくない。こうして拾ってもらえただけでありがたいのだ。なにかの折には他の補佐官を頼ろうと密かに決心する。


「あの、不勉強で恐縮なのですが、公務とは具体的にどのようなことをなさっているのですか?」


 これから先、自分がどんな仕事をするのか――エアニーとの会話で少しずつわかってはきたものの、まだまだ想像が追いつかない。午後からは実際に仕事に入るというので、今のうちにある程度心の準備を済ませる必要があるだろう。


「僕がいきなり連れてきたんだ。不勉強だなんてそんなふうに思わなくて大丈夫だよ」


 ヴァーリックが穏やかに笑う。お礼を言いつつ、オティリエは少しだけ頭を下げた。


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