魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「僕の仕事の内容は……そうだね。色々あるけど、まずは父上の決めた国の方針を踏まえて、分野ごとに目標を設定したりなにをやりたいかを検討していく。そのうえで、法律や予算、今後の国の計画について各部署の文官たちがより具体的な案を作成してくれるから、それを確認して許可を与えたり、修正を加えたりするのが僕の仕事かな。もちろん、文官たちには事前に『こうしたい』っていう中身は伝えているし、打ち合わせもたくさんしているけど、父や僕がすべての仕事をできるわけじゃないからね。どうしたって生じるズレを、すり合わせていく必要があるんだ」

「なるほど……」


 簡単っぽく説明しているが、果たしてオティリエにできることはあるのだろうか? 返事をしつつ、オティリエは不安になってくる。


「まあ、そうはいってもみんな優秀だからね。僕の仕事は基本的に印鑑を押すことだと思っているよ。補佐官に頼むことといったら、文官たちとのアポイントや書類のやりとりが主だから、そんなに身構えなくて大丈夫」


 そうなんですね、と返事をしつつ、オティリエは他の補佐官たちをちらりと見る。彼らの心の声を聞くに、誇張表現ではないらしい。彼女は少しだけ胸をなでおろした。


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