魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「あとは国が主催する式典への参加や、外交関係も僕の仕事だね。式典への参加だけならそんなに負担じゃないんだけど、先だって文官が作った挨拶文や手紙を添削する必要がある。他にも案外事務的な作業が多いんだ」

(へぇ……)


 そうなんだ、と感心していると、エアニーがそっと身を乗り出した。


「このへんの事務的な作業をヴァーリック様ではなく、ぼくたち補佐官が担当しています。もちろん、内容に問題がないかヴァーリック様にはおうかがいを立てますし、基本的には典型的な文例や書式例があるのでご安心を。いかに効率よく数をこなしていくか、ということが重要になってきます」

「わ、わかりました」


 不安がっていても仕方がない。オティリエはコクリとうなずき、大きく息をついた。


「それから、今年は僕の結婚相手を本格的に選ばなきゃいけない年なんだよね」


 ヴァーリックはそう言って困ったように笑う。


「結婚相手……」

「うん。僕ももうすぐ十八歳。そろそろ王位を継ぐことを考えなければならない年齢だ。祖父も父上も十八のときには婚約を発表していたしね」


 カチャカチャとフォークやナイフの音がやけに大きく感じられる。なぜだか胸がツキンと痛み、オティリエは思わず手を当てた。


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