魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「本当なら、すでに内々定を出しておくべき時期なんですよ。けれど、ヴァーリック様がお相手選びに乗り気じゃなかったので」

「え? そうなんですか? というより、本当にまだお相手は決まっていないんですか?」


 王族の結婚相手といえば国の未来を左右する超重要事項。相当早い時期から選定がはじまってしかるべきだろう。他国では年端も行かぬ頃から婚約を結ぶと聞くし、ヴァーリックにも密かにそういう相手がいそうなものだが。


「本当だよ。まっさらな白紙状態だ」

「どうして……?」

「だって、人間どう転ぶかわからないじゃないか。神童と呼ばれた人間が最終的には凡人という評価で終わることなんてざらにある。その逆もまた然りだ。だから、急いで結婚相手を選ぶ必要はない……っていうのが僕の考え。とはいえ、あまり長引かせてもいいことはないから、そろそろ本腰を入れなきゃならないんだけど。国民を不安にさせたくはないしね」


 ヴァーリックはそう言ってオティリエのことをまっすぐに見つめる。なんとなくいたたまれなくなって、オティリエはほんのりとうつむいた。


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