魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「でも、ヴァーリック様はすでにいらっしゃっていますし」

「ん? 今日は特別」

「え? ……特別?」


 オティリエが目を丸くする。
 そういえば、ヴァーリックは勤務開始時間の十五分前に出勤するという話だった。なぜ今ここにいるのだろう?


「オティリエはきっと、早く来ているだろうなあと思って。だからいつもより早く部屋を出たんだ。来てみてよかったよ」

「……え?」


 その瞬間、オティリエの頬がより一層真っ赤に染まった。


(わ……私のため?)


 全身が燃えるように熱い。
 ヴァーリックにこんなにも気にかけてもらえたことが嬉しい。こんなによくしてもらってバチがあたらないだろうか? オティリエはまだなんの役にも立たない新人だというのに。


「ねえ、せっかく二人きりになったんだ。仕事の前に少し話をしようか」


 ヴァーリックはニコリと笑みを深めつつ、ソファに座るようオティリエに促した。
< 111 / 330 >

この作品をシェア

pagetop