魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「そっか。……わかった。僕もオティリエのことは気をつけて見るようにしておくから」

「え? そんな……大丈夫です! ヴァーリック様にそんな負担はかけられません。こうして拾っていただけただけで本当にありがたいですし、自分の面倒は自分でみますから」


 エアニーからヴァーリックは面倒見がいい人だと聞いている。これが彼の性分なのだろう。それでも、オティリエは自分一人ではなにもできない子猫や子犬ではないのだし、あまり心配されると不安になる。オティリエはここにいてもいいのだろうか、と……。


「……僕がそうしたいだけなんだけどな」

「え?」


 それは心の声と聞きまごうほどの小さな声だった。オティリエが聞き返すと、ヴァーリックは穏やかに目を細める。それから彼女の肩をポンとたたき、ソファからゆっくりと立ち上がった。


「わかったよ。だけど、こうして定期的に二人で会って、オティリエの本音を聞かせてほしい。……もちろん、オティリエが嫌じゃなかったらだけど」

「え? 二人で、ですか?」


 オティリエの心臓がドキッと跳ねる。二人きりじゃなくとも本音は話せる。もちろん、他の補佐官の話などはしづらかろうが、元より他人に聞かせられないような話をするつもりはない。


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