魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
(でも……)


 ヴァーリックがオティリエを見つめる。あんな尋ね方をされて『嫌』だと言えるはずがない。


「お願いいたします」

「うん。……断られなくてよかった」


 ヴァーリックはそう言って心底安心したように笑う。オティリエは思わず視線をそらした。


(ヴァーリック様はズルい)


 こんなふうにオティリエがドキドキしていることを彼は知っているのだろうか? ……知っていて、あえてこんなことを言うのだろうか?


(私の気持ちがヴァーリック様に伝わればいいのに)


 とそのとき、オティリエはヴァーリックが彼の能力を他人に分け与えられることを思い出す。加えて彼は『能力は磨くもの』とも話していた。もしかしたら、特訓次第でオティリエにも使えるようになるのだろうか? そうすれば、オティリエの心の声をヴァーリックに伝えることができるのだろうか?


「あ、あの! ヴァーリック様は以前、私に他の人の心の声が聞こえないようにしてくださいましたよね?」

「ん? ……ああ、能力の譲渡のこと?」


 ヴァーリックは聞き返しつつ、オティリエの手をそっと握る。


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