魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「能力の譲渡は基本的に身体的な接触をとおして行うんだ。自分の身体のなかに流れている気を意識して――それを手のひらに集めて渡すイメージ。オティリエもやってみる?」
「は、はい。ヴァーリック様がよろしければ教えていただけると嬉しいです」
いつかオティリエの能力がヴァーリックの役に立つ日が来てほしい。オティリエはヴァーリックの手を握り返し、ギュッと目をつぶってみる。
「……どう? 能力の流れを感じる?」
「えっと――ごめんなさい。よくわからない、です」
オティリエはがっくりと肩を落としつつ、小さくため息をついた。
(やっぱり、そんなにすぐに変われるものじゃないのよね)
ある日突然なんでもできる人間に生まれ変わっている……なんて都合のいいことはおとぎ話のなかでしか起こらない。格好悪くとも情けなくとも、できない自分と向き合って、少しずつ練習を積み重ねていくしかないのだ。オティリエは手のひらに力を込め直した。
(いつかヴァーリック様に私の能力を渡せたら……役立てていただけたら、そしたら私がこんなにもヴァーリック様を慕っているって伝わるかな?)
と、ヴァーリックが「ん?」と小さく目をみはる。彼はキョロキョロと辺りを見回したあと、もう一度オティリエをまじまじと見る。オティリエはギュッと目をつぶったまま、必死に自分の能力と向き合っていた。
「は、はい。ヴァーリック様がよろしければ教えていただけると嬉しいです」
いつかオティリエの能力がヴァーリックの役に立つ日が来てほしい。オティリエはヴァーリックの手を握り返し、ギュッと目をつぶってみる。
「……どう? 能力の流れを感じる?」
「えっと――ごめんなさい。よくわからない、です」
オティリエはがっくりと肩を落としつつ、小さくため息をついた。
(やっぱり、そんなにすぐに変われるものじゃないのよね)
ある日突然なんでもできる人間に生まれ変わっている……なんて都合のいいことはおとぎ話のなかでしか起こらない。格好悪くとも情けなくとも、できない自分と向き合って、少しずつ練習を積み重ねていくしかないのだ。オティリエは手のひらに力を込め直した。
(いつかヴァーリック様に私の能力を渡せたら……役立てていただけたら、そしたら私がこんなにもヴァーリック様を慕っているって伝わるかな?)
と、ヴァーリックが「ん?」と小さく目をみはる。彼はキョロキョロと辺りを見回したあと、もう一度オティリエをまじまじと見る。オティリエはギュッと目をつぶったまま、必死に自分の能力と向き合っていた。