魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
 最初のページを開くと年表がのっていた。

 何百年も前に遡る建国の歴史。当時の人々がどのような生活を送っていたのか、どうして王が誕生したのか、文化発展の過程、それぞれの年代における課題、国を大きく変えた王や家臣の名前、いろんなことが時系列で記されている。


(これがヴァーリック様が背負っているものなのね)


 今を生きる国民や国土だけではない。彼が守らなければならないのは過去や未来を生きる国民や文化、それからこの国の歴史そのものなのだと実感する。


(あら? これ、なにかしら)


 ふと、歴史書の端に小さなメモを見つける。


【すごい。一度に何人もの話を聞き分けられるなんて、この年の王にはアインホルン家の血が流れているのだろうか?】


 どこか幼さの残る文字。数ページ捲ってみたところ、オティリエはまた似たような走り書きを見つけた。


【文字や文学の発展の歴史にも王の影あり。これから先、僕もなにか考えなければいけないのかも】

【妃が何人もいれば、その父親が争うのは当然だろうな。おじい様やお父様には妃が一人しかいないし、歴史から教訓が活かされている……と思いたい】

【この時代は貴族たちの争いが激しい。王が王として機能していない。民の負担があまりにも大きい。こんな歴史を繰り返してはいけない】

(これは……)


 オティリエの前にこの歴史書を使って学んだ人がいる。内容から判断するに、その人物は王家に連なるものに違いない。


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