魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
***


(おめかし……おめかしとは)


 初めて迎えた休日の朝――オティリエは鏡の前でにらめっこをしていた。

 ヴァーリックから街に出かけようと誘われたのは昨日のこと。退勤して以降、どんな格好をすればいいのか考え続けているものの、まったくいい案が浮かんでこない。


『せっかくのデートだから、おめかししてきてね。……楽しみにしてる』

(あんなふうにお願いされたんだもの。下手な格好は絶対できないし……)

「失礼します……っと、休日なのに早起きですね。おはようございます、オティリエ様」


 そろりと部屋の扉が開き、カランがヒョコリと顔を出す。


「カラン! 今日はお休みだったんじゃ……?」


 侍女にだって休日は必要だ。今日ぐらい、自分のことは自分でしようと思っていたのだが。


「オティリエ様にとってははじめての週末ですもの。お疲れでしょう? なにかお役に立てればと思いまして」

【それに、昨夜なんとなく様子がおかしかったから、気になったのよね……】


 そう言って微笑むカランが、今のオティリエにとってはまるで神様のように見える。オティリエは「だったら……!」と話を切り出した。


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