魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「そうか。それはよかった」

「これがヴァーリック様のおっしゃっていた能力を磨くということなんでしょうか?」

「うん、そうだね。一人で過ごしていたら『意識的に聞かない』という経験はできないし、能力の使い方も模索できない。このあいだ僕に自分の能力を渡そうとしてくれたときみたいな実践も」

「はい! 全部、ヴァーリック様が私を連れ出してくださったおかげですね」

「それは違うよ」


 と、ヴァーリックが否定する。なぜ? と首を傾げると、ヴァーリックはそっと瞳を細めた。


「オティリエは屋敷で家族や使用人たちに立ち向かおうとしていただろう? あんなひどい環境で、それでも変わろうって、強くなろうともがいていた。だから今、君が変わりはじめているのは僕のおかげではない。オティリエ自身が頑張ったからだ。もっと自分に自信を持って。君は本当に頑張ったんだよ」


 ヴァーリックの言葉にオティリエの目頭が熱くなる。
 そんなふうに言ってもらえて嬉しくないはずがない。


(私、頑張ったんだ……)


 まだたったの一週間だけれど。他の人に比べれば小さな一歩かもしれないけれど。それでも己の努力を、変化を認めてくれる人がいる。

 だからこそ、オティリエにははっきりさせておきたいことがあった。
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