魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
 言葉にならない感情を必死にひねり出しながら、ヴァーリックは小さくため息をつく。


「僕はカランに『オティリエが他の補佐官と出かけてる』って思われるのが嫌なんだよなぁ」

「え?」


 それはどういう意味だろう? オティリエはヴァーリックの言葉を頭のなかでつぶやきながら、彼と同じように唸り声をあげる。


「それは……どうしてなんでしょうね?」

「ね? 僕にもよくわからない。こんな経験はじめてだ」


 悔しいと唇を尖らせるヴァーリックにオティリエは思わず笑ってしまう。


「いつか理解できる日が来たらいいですね」

「……うん。もしもオティリエが僕より先に理由に気づいたら、そのときは教えてくれる?」

「それは――責任重大ですね。心して聞かねば」


 また一つオティリエの仕事が増えてしまった。
 けれど、頼ってもらえることが嬉しい。オティリエはそっと目を細める。


「頑張ります」


 ヴァーリックは「うん」と笑ってこたえた。
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