魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「オティリエにはこれがなんだかわかる?」

「え? えっと……」


 ブローチに埋め込まれているのは水色の透き通った石だった。アクアマリンによく似ているが、色彩や光沢が微妙に違っている。


「もしかして水晶、でしょうか?」

「正解。だけどただの水晶じゃないんだ。この水晶にはエアニーの能力が込められている」

「エアニーさんの?」


 ヴァーリックはオティリエからブローチを受けとると、料理の上にそっとかざす。すると、ブローチがほんのりと光り輝いた。


「エアニーは物事を識別する能力を持っているんだ。素材、産地、成分構成、良し悪しなど、いろんな情報を自由自在に読みとることができる。もちろん、毒が入っているかどうかもね」

「そ、そんなすごい能力をお持ちだったんですね……!」


 さすがはヴァーリックの側近。ものすごい才能の持ち主だとオティリエは感嘆してしまう。


「オティリエの能力だってエアニーに負けない素晴らしい能力だよ?」

「え? 私? あ、ありがとうございます。だけど、私の能力はまだまだですし、これから先に活かせる機会があるかもよくわかりませんから」


 唐突に褒められて、オティリエはちょっぴり動揺してしまう。

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