魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
(私よりもヴァーリック様のほうがよほど、人の心を読むのが上手だわ)


 どこに行きたいとねだったわけではないのに……ヴァーリックはオティリエの見たい景色を見せてくれる。行きたい場所へと連れて行ってくれる。


「本当は古都のほうもまわりたいんだけどね。今日の反応を見るに、オティリエはとても好きそうだし……」

「古都! すっごく興味あります。たしか三百年前に遷都をしたんですよね?」


 都が移ることはそう多くない。だが、人口が一極集中してしまった場合や、天災等の影響により都都として機能しなくなった場合など、必要に応じて遷都が行われる。


「そう。理由は覚えてる?」

「理由は……宗教的な干渉が強くなったからだと読みました。神官や彼らと結託した貴族たちが政治に口を挟むようになったのだと。ですから、彼らの影響を断ち切るために、大きな神殿や寺院がたくさんある古都から離れ、今の土地に王都を移したんですよね?」

「正解。きちんと勉強できているね」


 ヴァーリックはそう言ってニコリと微笑む。


「今日はあまり時間がないし、三か月後、古都にある神殿に視察に行く予定になっているんだ。そのときに案内をしてあげるから楽しみにしていて」

「え? あの、私も視察に同行していいんですか?」

「もちろん。オティリエは僕の大事な補佐官の一人だからね」


 そっと頭を撫でられ、オティリエは胸がキュッとなる。楽しみで、嬉しくて、たまらなかった。


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