魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「あ、あの! 犯人は全員を殺すと言っていたんですが、そんなことが可能なんでしょうか?」

「できるかできないか、でいうなら不可能ではない。ただし、方法はかなり限定されるよ。たとえば爆弾を設置するとかね。もしもその仮説が正しいとして、爆弾を仕掛けるなら、広場の中央か人の集中している西側エリアに設置すると思う。そのほうが効率的に多くの人を傷つけられるからね」

「そんな! それじゃあ、私達も急いで向かわないと……」

「……大丈夫。僕の護衛ならそのぐらいのことには気づいてくれるはずだ。きっと今頃、中央と西側に優先的に人を配置してくれている。ただ、どのぐらい猶予があるかわからないし、方法も爆弾とは限らない。そんなものを素人が作れるとは思えないし」


 とそのとき、脳裏にまた心の声が流れてくる。


【よし、はじめよう】

「ダメだ、男性が動き出す」


 ヴァーリックが言う。オティリエたちに緊張が走る。広場のあちこちを見回しつつ、不安と焦燥感がオティリエの胸を焼いた。


(なにか……なにか手がかりはないの?)


 目をつぶり、必死に意識を集中させる。


【よしよし、いい子だ。そう……こっちに行くんだ】


 と、それまでとは異なるささやくような声音が聞こえ、オティリエは思わず振り返った。


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