魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「だけど、残念ながら僕自身はあまり動物に好かれるほうではなくてね……。どれだけ可愛がってもすぐにそっぽを向かれてしまうんだ。それでも、どうしても彼らと仲良くなりたくて。そんなときに、動物に好かれる素晴らしい能力を持った騎士がいるって聞いたら重用したくなるだろう?」
ヴァーリックはそう言って護衛騎士――フィリップのほうを見る。彼は馬たちに頬ずりをされながら、オティリエたちのほうを向いて笑っていた。
「まあ、あそこまでくると『好かれる能力』というより『意のままに操れる能力』っていったほうが正しいけどね。フィリップは暴走している動物が相手でもあのとおり落ち着けることができるんだ。本当に唯一無二の才能だろう? 心底羨ましい。だから、彼が僕の従者になってくれてよかったって心から思うんだ」
ヴァーリックはフィリップを見つめつつ、まぶしそうに目を細める。オティリエは思わずハッと息を呑んだ。
『僕の能力って、自分自身でなにかができるわけじゃないんだよ? 母上なんて未来を視る能力があって、立派に国を守っているというのに、僕は他人の能力がなければなにもできない。腹立たしくて、悔しくて、拗ねていた時期がかなり長かったんだ。けれど、ないものねだりをしても仕方がない――ある日唐突にそう気づいてね。方向性を変えることにしたんだ。ないものは集めればいい。アインホルン家に限らず、僕はいろんな才能のある人たちを自分の元に集めることにしたんだ』
ヴァーリックはそう言って護衛騎士――フィリップのほうを見る。彼は馬たちに頬ずりをされながら、オティリエたちのほうを向いて笑っていた。
「まあ、あそこまでくると『好かれる能力』というより『意のままに操れる能力』っていったほうが正しいけどね。フィリップは暴走している動物が相手でもあのとおり落ち着けることができるんだ。本当に唯一無二の才能だろう? 心底羨ましい。だから、彼が僕の従者になってくれてよかったって心から思うんだ」
ヴァーリックはフィリップを見つめつつ、まぶしそうに目を細める。オティリエは思わずハッと息を呑んだ。
『僕の能力って、自分自身でなにかができるわけじゃないんだよ? 母上なんて未来を視る能力があって、立派に国を守っているというのに、僕は他人の能力がなければなにもできない。腹立たしくて、悔しくて、拗ねていた時期がかなり長かったんだ。けれど、ないものねだりをしても仕方がない――ある日唐突にそう気づいてね。方向性を変えることにしたんだ。ないものは集めればいい。アインホルン家に限らず、僕はいろんな才能のある人たちを自分の元に集めることにしたんだ』