魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
(お姉様の言うとおりだわ)


 これまでの人生でオティリエの価値を認めてくれた人間がどれほどいただろう? たとえはじめは褒めてくれても、みなすぐにオティリエの前からいなくなってしまう。今回のマナー講師がいい例だ。


(私を必要としてくれる人なんて誰もいない)


 仕事なんて見つかりはしないだろう。


「そうは言ってもイアマ、このままオティリエがずっと屋敷にいるよりもいいと思わないか?」

「そんなの、頃合いを見て金持ちの年寄りと結婚させればいいじゃない。そちらのほうがずっと家のためになると思うわ」


 ケラケラと楽しそうに笑いつつ、イアマはオティリエをそっと見る。


(それも悪くない……かな)


 多分。ここに居続けるよりはずっとマシだ。……そんなことはとても言えないと思いつつ、オティリエは心のなかでため息をついた。


(それにしても、王妃殿下っていったいどんなかたなんだろう?)


 父親の話によると王妃はアインホルン家の血縁者――父のいとこにあたるんだそうだ。アインホルンの血を引いている以上なにかしら能力を持っていそうではあるが、そういった噂は聞こえてこない。……もっとも、オティリエは他人との交流自体を断っているため、情報を手に入れるすべといえばこっそりと拝借した新聞ぐらいなのだが。


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