魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「私も、さっきの男性も、もっと早く誰かに相談が……助けてって言えていたらでよかったのでしょうけどね。……正直私はそんなこと思いつきもしませんでした。世界中のみんなが私のことを嫌っていると思い込んでいましたし、どこに行けばいいかもわかりませんでしたから」


 彼女の場合はそもそも外に出るという選択肢もなかったし、情報を得るすべだってひどく限られていた。仮にそういった場所が存在しても、利用できなかった可能性は高いだろう。


「……そうだね。現状は『助けて』と自ら声を上げることができない人に気づくための方法が存在しない。もしもオティリエが夜会に出席しなかったら、僕は君が苦しんでいることに気づかなかっただろう。国としては家庭や個人の事情に入り込むことは控えている、というのが実情だ」


 普通の家庭は国や領主の介入なんて必要ない。貴族であればなおさら、他人から詮索されるなんて恥以外のなにものでもないだろう。だからこそ、オティリエの父親はヴァーリックから口出しされることに困惑し、ひどく嫌がったのだから。


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