魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「しかし、相談のための窓口だってきちんと整備されているとはいい難い。敷居が高いと感じる人は多いだろうし、そもそも存在すら知らない人も多いだろう。基本的には道路や水道といった国民みんなに関わることが主で、個別の相談に丁寧に応じているわけではないしね」

「……作れないものでしょうか? 人々の声に耳を傾ける場所を」


 オティリエが思わず小さくつぶやく。「え?」と目を丸くするヴァーリックに、彼女は焦って首を横に振った。


「い、いえ! 色々と課題があって今の形になっているとわかってるんです。それに、場所とか、人員とか、ノウハウとか、予算とか! そういうものをクリアできないと新しい事業はできないんだってことも先日教わりました。だけど、あんなことがあったあとだから……なんとかできないかなって思ってしまうんです。理想は理想で、全部を実現できないってこともわかっているんですけど……」

「いいかいオティリエ。よく覚えておいてほしい」


 ヴァーリックが改まった様子で口にする。相槌を打ちながら、オティリエは思わず居住まいを正した。


「僕たちの仕事は理想を描き、追い求めることだ」

「え?」


 一体どういうことだろう? オティリエはそっと首を傾げた。


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