魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
『わかったわ』


 イアマの返答に、父親や使用人たちがホッとため息をつく。

 今はね、と心のなかで付け加えつつ、彼女は眉間にシワを寄せた。


 あれからすでに三カ月。イアマはもう十分待った。しかし、父親にも釘を差されている以上、前回と同じやり方でオティリエを連れ戻すのは難しそうである。


(そうだわ! 文官として働いていらっしゃるお兄様ならオティリエの状況が詳しくわかるかもしれない)


 オティリエごときが補佐官としてやっていけるはずがない。重用されているらしい、というのはアインホルン家に媚を売りたい人間が父親に対して流した情報で、実態はかけ離れているということなのだろう。兄ならば忖度のないありのままのオティリエの情報をイアマに与えてくれるはずだ。


(そうよ。よく考えたら、お兄様にオティリエを連れ戻してもらえばいいんだわ。お兄様だってきっと、無能な身内が補佐官として働くことを恥じているはずよ)


 善は急げ。イアマは急いで手紙をしたため、兄に対して送るようにと命令する。


(見てなさい、オティリエ。絶対にあんたをこの家に連れ戻してやるんだから)


 イアマは城の方角を見つめつつ、ニヤリと笑みを浮かべるのだった。


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