魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
【ヴァーリック様……!】

【ああもう、焦れったいな!】

(焦れったい? ……なにがそんなにおかしいのかしら?)


 別に馬鹿にされている感じはしない。むしろなにやら温かい空気を感じるのだが、それがどうしてなのかわからないままだ。問いただしたい気持ちもあるが、彼らが笑っていることをヴァーリックには知られないほうがいいかもしれないしとオティリエは首を傾げる。


「そういえば、仕事の件でオティリエに話しておきたいことがあるんだ。少しあっちのほうで話そうか」


 と、ヴァーリックがソファのほうを指差した。


【ヴァーリック様、今は休憩時間ですよ? 本当に仕事の話ですか?】

【執務室に戻ってきたときは、みんなと話したそうにしてたのになあ】


 オティリエがうなずくよりも先に、補佐官たちのツッコミが聞こえてくる。


(そう言われればそうだけど……)


 本当にみんな、どうしてしまったのだろう? そう思いつつ、オティリエはヴァーリックのあとに続いた。



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