魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
35.寂しさと戸惑いと
無事に誤解が解けたあと、ヴァーリックはおもむろに別の話題を切り出した。
「お兄様、ですか?」
「うん。今度の視察に同行してもらう予定なんだ。オティリエには事前に伝えておいたほうがいいと思って」
家族との関係性が悪いオティリエの気持ちに配慮してくれているのだろう。オティリエは「ありがとうございます」と返事をしつつ、そっと首を横にひねる。
「正直兄とはほとんど話しをしたことがないんです。八つも年が離れているうえ、私が八歳のときには家を出てしまいましたし、私とは関わり合いになりたくない、という感じでしたから」
オティリエの兄であるアルドリッヒは一度見たものは決して忘れない能力の持ち主だ。父親である侯爵とも姉のイアマとも少しタイプが違う。冷静沈着、感情を揺らすことがほとんどない人で、オティリエに対しては無関心という印象。心のなかで悪口を言われるわけでもなく、かといって姉から守ってくれるわけでもない。会話をした経験は皆無に等しく、顔を合わせる機会も少なかったため、どういう人かよくわからないというのがオティリエの感想だ。
「お兄様、ですか?」
「うん。今度の視察に同行してもらう予定なんだ。オティリエには事前に伝えておいたほうがいいと思って」
家族との関係性が悪いオティリエの気持ちに配慮してくれているのだろう。オティリエは「ありがとうございます」と返事をしつつ、そっと首を横にひねる。
「正直兄とはほとんど話しをしたことがないんです。八つも年が離れているうえ、私が八歳のときには家を出てしまいましたし、私とは関わり合いになりたくない、という感じでしたから」
オティリエの兄であるアルドリッヒは一度見たものは決して忘れない能力の持ち主だ。父親である侯爵とも姉のイアマとも少しタイプが違う。冷静沈着、感情を揺らすことがほとんどない人で、オティリエに対しては無関心という印象。心のなかで悪口を言われるわけでもなく、かといって姉から守ってくれるわけでもない。会話をした経験は皆無に等しく、顔を合わせる機会も少なかったため、どういう人かよくわからないというのがオティリエの感想だ。