魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「うん、いい心がけだ。だけど、事前に僕の能力で魅了の影響を無効化できないか試してみるつもりだし、視察の際にアルドリッヒとの絡みはそこまでない予定だ。それでも、辛いようなら配慮するからきちんと僕に頼ってね」

「そんな、ヴァーリック様にそこまでしていただかなくても……」

「僕がそうしたいんだよ」


 ヴァーリックに微笑まれ、オティリエの胸がキュンと疼く。
 彼は誰にでも優しい人だ。そんなことは重々承知している。けれど最近、なにやら特別扱いをされているような気がしてしまい、その度にオティリエは『勘違いだ』と自分に言い聞かせている。ヴァーリックはオティリエの能力に期待をしてくれているだけ。他の補佐官と同列なのだから、と。


(ヴァーリック様の役に立つために頑張らないと)


 ペチペチと頬を叩き、オティリエは気合を入れ直した。


***


 それから数日後、神殿への視察の日がやってきた。


「わぁ……! これがティオリオルン神殿なんですね!」


 歴史を感じる古い建物と独特な香り、巨大な石柱や大理石でできた床。城や王都の寺院とはまた違った趣のある建物で、オティリエは感動してしまう。


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