魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
***


 定刻になったところで神殿の視察が開始となった。

 神官たちに連れられてぐるりと神殿を一周する。そのあと、普段は来殿者用に開放されている祈りの間を利用して概況説明の場が設けられた。
 当日配布された資料には支所も含めた神官たちの人数や日々の来殿者数、国からの補助金や寄付、その使途を含めた神殿の財政状況といった内容が記載されていた。


(見た感じおかしなところはない、わよね)


 おかしなところがなにもないのは当然なのだが、綺麗に整った数字を見ながらオティリエは思わずホッとしてしまう。


「次に財政状況でございます。資料の中ほどにございます使途明細を御覧ください。収入の多くは貧しい信者たちの食事や衣服、支援をするために使用をしており……」


 視察の責任者であるヴァーリックは神官たちと向かい合って最前列に座っている。新人のオティリエは最後方、末席だ。二人の間には他の補佐官やアルドリッヒをはじめとした別の部署から派遣された文官が何人も座っていて、ヴァーリックとの距離を嫌でも感じてしまう。


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