魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
(聞いて、私にこたえてください。ヴァーリック様。ヴァーリック様……!)


 オティリエの額に汗が滲む。ズキズキと頭が痛み、ドクンドクンと心臓が鳴る。やっぱりダメなのか――オティリエが諦めかけたそのときだった。


【――オティリエ?】


 と、ヴァーリックの声が聞こえてくる。彼はほんの少しだけこちらを振り返り【今、僕を呼んだの?】とささやいた。


(ヴァーリック様! 私の声が聞こえるんですね!?)

【うん、聞こえるよ。一体どうしたの?】


 ヴァーリックは前を向いたままオティリエへと返事をしてくれる。


(よかった! 繫がった!)


オティリエはグッとガッツポーズを浮かべたあと、キョロキョロと周囲を見回す。ヴァーリック以外の人間に二人の会話は聞こえていないようだ。彼女はぐいと身を乗り出した。


(私、神官の心の声を聞いたんです。『謀反を企てている』って言っていたのを! それに『どうせ今回も気づかない』とも話していたから、おそらくは何年も前から準備をしていたんだと思います)


 ついで聞こえるハッと息を呑む音。表情はこちらからはうかがえないが、彼が動揺をしているのがハッキリとわかる。


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