魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「それで、鍵は? どのように管理をしていたんだい?」

「わ、私の執務室に置いておりました」

「執務室には誰でも入れる状態なの?」

「いや、さすがにそんなことは」

「それじゃあ一体誰が宝物庫から宝物を持ち去ったんだろうね? しかも、せっかく侵入したのに全部を持ち去らないなんておかしいな。持ち出しやすい軽い宝物も随分残っているし。神官長もそう思わない?」


 見ているだけで胃がシクシクと痛くなるような応酬。
 と、見ればエアニーが宝石の埋め込まれたロザリオをジッと見つめているではないか。


「エアニーさん? どうしたんですか?」


 オティリエはエアニーと一緒になってロザリオを覗き込んだ。ロザリオの頂点には大きなルビーが埋め込まれており、周りには小さなダイヤモンドが散りばめられている。たしか、隣国から友好の印としてもらった一品のはずだ。貴重な品のため、実際に手にとって見ることはできないし、薄暗い宝物庫ゆえにイマイチ色彩がわからないけれども。


「これ、レプリカです」

「え? つまり、偽物ってことですか?」


 識別の能力者であるエアニーが断言するからには間違いないのだろう。だが、あまりにもだいそれていて信じたくないという気持ちになってしまう。


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