魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「オティリエ、これ以上待っていても、さすがに今夜は情報があがってこないよ」

「ヴァーリック様……すみません。けれど、もしかしたらって思ってしまって」


 調査の内容は逐一報告があがってくることになっている。とはいえ、各担当からバラバラと持ち込まれても対応に困るし調査効率が悪いため、現場担当者がとりまとめを行う決まりだ。早くても明日の朝イチにしか報告が来ないだろうということで、他の補佐官はすでに退勤してしまっている。残っているのはオティリエとヴァーリックだけだ。


「待つこと、休むことも仕事のうちだよ。以前も言ったけれど、すべての仕事を自分一人でこなせるわけではないからね。そして、任せると決めた以上は相手のことを信じる。王太子の補佐官というのはそういう役職なんだよ」

「はい……そうですね」


 やるべきことはたくさんあれど、自分の体は一つしかなく、こなせる仕事や体力には限界がある。だからこそ、一人ひとりに役割が与えられている。オティリエに割り当てられている仕事は現状ない。今は休むべきときだ……そう頭ではわかっているのだが、部屋に帰っても気が急くだけだろう。


(あっ、だけど……)


 情報が集まっていない今この状態でも、オティリエにできることがあるかもしれない。これならみんなの――ヴァーリックの役に立てるのではないだろうか?


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