魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
 けれど、それから二日後のこと。事態は思わぬ展開を見せる。


「死んだ? 神官長が?」

「はい。神殿内に暗殺者が入り込んだらしく……神官長の他にも、主だった神官の何人かが殺されたようでして」


 報告に上がった文官は顔を真っ青にしてそう説明した。


「なるほど……つまりは口封じをされたんだな」

「口封じ?」

「前にも言っただろう? 神官たちだけで謀反を成功させることは絶対にできない。この話の裏には絶対に貴族が絡んでいるって。おそらく、神殿に大規模な調査が入ったと知って、神官たちの口から自分を割り出されないように殺してしまったんだ」


 オティリエの顔から血の気が引く。手のひらがブルブルと震え、おそろしさのあまり息が上手にできなくなる。


(どうしよう……これじゃどこに資産を隠しているか聞き出すことができない。もしもその貴族が謀反を諦めていなかったら? 国が――人々が危険な目にあってしまう)

「オティリエ、落ち着いて」


 ヴァーリックはそう言ってオティリエの手を握る。指先の震えがヴァーリックのぬくもりで段々と収まっていく。オティリエは思わず泣きそうになった。


「ヴァーリック様……」

「大丈夫。時間はかかるけど、丁寧に調査をすればつながりは必ず見つけられる。必ずだ」

(だけど、それじゃ遅かったら……?)


 そう問いかけたくなるのを必死に我慢して、オティリエはコクリとうなずく。他の補佐官たちも顔を見合わせつつ、互いにうなずきあった。


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