魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!

42.たしかなこと

(どうしよう……どうするのが正解なの?)


 ヴァーリックは今執務室にいない。理由をつけて他の補佐官を連れてきたいところだが、そんなことをすれば怪しまれてしまうだろう。オティリエが一人で対処するしかない。できる限り会話を長引かせて情報を引き出す。ヴァーリックが神官長相手にやっていたときのように――オティリエはゴクリとつばを飲んだ。


「……だけど、そうですね。おっしゃるとおり少しだけ疲れてきました。二ヶ月もの間残業三昧ですから。早く神官たちが隠した資産を見つけて、調査が終わってほしいものです」

「そんなの、探したところで無駄ですよ。どうせ自分のために使ってしまったあとでしょうからね。所得隠しをする理由なんて、十中八九が私利私欲のためでしょう?」


 ハハハと笑い声を上げつつ、文官はチラリとオティリエの表情をうかがう。


【いいぞ。このまま殿下に調査の打ち切りを進言しろ。補佐官たちから不満の声があがれば、殿下も気が変わるかもしれない】


 やはりこの男は怪しい。首謀者――というわけではなさそうだが、関係者には間違いないだろう。


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