魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「どうして僕がここに? って顔をしているね」

「え? いや、まあそれは……先触れもない突然の訪問でしたし、こんな辺境までいらっしゃるなんて、どういう風の吹き回しか気になるのは当然かと」


 まるでこちらの考えを見透かしているかのような発言に笑顔。辺境伯は引きつった笑みを浮かべつつ、ふぅと小さくため息をつく。


【落ち着け……まだ企みがバレたと決まったわけではない。この場を誤魔化せば私の計画も……】

「残念だけどすでに証拠は多数押さえてある。誤魔化しきれるような状態じゃないよ」

「なっ……!?」

【おかしい。一体どういうことだ? 私の考えが筒抜けになっている。しかも今『証拠は押さえてある』と言わなかったか? 一体なんの――どんな証拠を押さえていると言うのだろう?】


 辺境伯はゴクリとつばを飲む。


「神殿とは随分前から仲良くやっていたみたいだね。馬、鎧、刀剣に槍、弓矢、火薬……換価すれば相当な金額になる。そのくせ神殿に調査が入った途端、口封じのために神官たちを殺してしまうんだもの。なかなかに酷いと思わない?」


 辺境伯は思わず立ち上がり、キョロキョロと辺りを見回す。人払いを、と言われたため、この場にはヴァーリックと彼の女性補佐官、それから辺境伯の三人しかいない。


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