魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
***
ちょうどその頃、アインホルン邸をひとりの男性が訪れていた。
「お久しぶりです、お兄様!」
イアマが兄であるアルドリッヒにギュッと抱きつく。アルドリッヒはため息をつきつつ「久しぶりだな」と返事をした。
「わたくし三カ月間もずーーっとお返事を待っていたのよ? これまで一体なにをしていらっしゃったの?」
「……仕事が忙しかったんだ。返事を書くような余裕はなかった」
アルドリッヒは神殿の調査を担当していたのだから、イアマにかまっている時間などない。けれど、イアマがあまりにもしつこく手紙を寄越すものだから、ようやく仕事が片付いた今夜、こうして屋敷を訪れたのだが。
「それで? オティリエを連れ戻してくれる話は? 一体どうなっているの?」
イアマが瞳を輝かせる。アルドリッヒは眉間にシワを寄せ、もう一度小さく息をついた。
「イアマ――オティリエはもう、ここには戻ってこないよ」
「え?」
まるで憐れむような、蔑むような顔でアルドリッヒがイアマを見つめる。こんな表情、生まれてこの方アルドリッヒから向けられたことはない。得も言われぬ焦燥感にかられながら、イアマは首を横に振った。
「そんな……どうして? あの子なんて地味で陰気な能無しでしょう? 城に居てもお荷物になるだけで……」
「お荷物? とんでもない。オティリエはヴァーリック殿下の補佐官として、とても立派に働いていたよ。屋敷にこもって威張り散らしているどこかの誰かとは違ってね」
「な、なんですって!?」
痛烈な嫌味にイアマの顔が真っ赤に染まる。
ちょうどその頃、アインホルン邸をひとりの男性が訪れていた。
「お久しぶりです、お兄様!」
イアマが兄であるアルドリッヒにギュッと抱きつく。アルドリッヒはため息をつきつつ「久しぶりだな」と返事をした。
「わたくし三カ月間もずーーっとお返事を待っていたのよ? これまで一体なにをしていらっしゃったの?」
「……仕事が忙しかったんだ。返事を書くような余裕はなかった」
アルドリッヒは神殿の調査を担当していたのだから、イアマにかまっている時間などない。けれど、イアマがあまりにもしつこく手紙を寄越すものだから、ようやく仕事が片付いた今夜、こうして屋敷を訪れたのだが。
「それで? オティリエを連れ戻してくれる話は? 一体どうなっているの?」
イアマが瞳を輝かせる。アルドリッヒは眉間にシワを寄せ、もう一度小さく息をついた。
「イアマ――オティリエはもう、ここには戻ってこないよ」
「え?」
まるで憐れむような、蔑むような顔でアルドリッヒがイアマを見つめる。こんな表情、生まれてこの方アルドリッヒから向けられたことはない。得も言われぬ焦燥感にかられながら、イアマは首を横に振った。
「そんな……どうして? あの子なんて地味で陰気な能無しでしょう? 城に居てもお荷物になるだけで……」
「お荷物? とんでもない。オティリエはヴァーリック殿下の補佐官として、とても立派に働いていたよ。屋敷にこもって威張り散らしているどこかの誰かとは違ってね」
「な、なんですって!?」
痛烈な嫌味にイアマの顔が真っ赤に染まる。