魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「今日は仕事のことは忘れて。オティリエも招待客の一人として楽しんでね」

「はい。ありがとうございます」


 王妃はそう言って他の招待客のもとへと向かう。


(招待客の一人として、か)


 たしかに、仕事ばかりしてきたオティリエにとってこんな機会はまたとない。今日この場に招かれているのはヴァーリックの婚約者候補だけではないのだし、王妃の言うとおりしっかりと楽しむべきだろう。


(よし)


 オティリエは気持ちを切り替えることにした。


 定刻。王妃が挨拶をしてからお茶会が正式にはじまる。ヴァーリックは遅れてくることになっているため、令嬢たちは次々に王妃のもとへと集まっていた。


【絶対に王太子妃になってみせるわ】

【ヴァーリック殿下の前に王妃様に気に入られないと】

【この日のために社交界で妃殿下の情報をたくさん仕入れてきたんだもの。絶対に失敗できないわ】


 そういった心の声が聞こえてくるたびにオティリエは面食らってしまう。


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