魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「ヴァーリック殿下!」

「本日はお招きいただきありがとうございます!」

「以前の夜会ぶりでございますわね! お会いできて光栄ですわ!」


 我先にと令嬢たちが集まっていく。互いに身体をぶつけ合い、少しでもヴァーリックに近づこうと必死だ。あまりの逞しさ、凄まじさにオティリエは目が点になってしまう。


(すごい……とてもじゃないけど敵わないわ)


 オティリエはああはなれない。やはりあのぐらいのガッツがないとヴァーリックの妃にはなれないのだと現実を突きつけられた気分だった。


【あーーあ、せっかくオシャレしてきたのに、やっぱりヴァーリック殿下には挨拶すらできそうにないわね】


 ふと、誰かの心の声が聞こえてきて、オティリエははたと顔を上げる。


【仕方がないわよね。わたくしはあんなに綺麗じゃないし】

【すごいな……羨ましい】

【勇気を出してきてみたけど、私なんてお呼びじゃないわよね。せめてひとことぐらい殿下と言葉をかわしてみたかったな】


 オティリエの近くで数人、令嬢たちがヴァーリックのことを見つめている。


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