魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
(そうか……そういう女性もいるわよね)


 みんながみんな自分に自信を持てる訳では無い。オティリエと同じように感じている女性もたくさんいるのだ。

 もしもオティリエがヴァーリックに頼めば、彼は彼女たちに声をかけてくれるだろう。けれど、少なくともしばらくのあいだあの場から動けないだろうし、そもそもこのお茶会は妃を選ぶためのものだ。邪魔をするのは忍びない。


(だけど、せっかく来てくださったんだもの。せめて楽しんでいってほしい)


 オティリエは意を決して令嬢たちのもとへと向かう。


「あの……よかったらあちらでお話をしませんか? すごく美味しいデザートがあるんです」


 令嬢たちは一斉に顔を上げ、オティリエのことをじっと見つめる。


「私、お茶会に呼ばれるのがはじめてで。友達と呼べる人も少ないですし、しばらくはヴァーリック殿下に話しかけられそうにないでしょう? せっかくだからいろいろとお話を聞いてみたいなぁって」


 オティリエの心臓がドキドキと鳴る。断られたらどうしよう? 鬱陶しい、不快に思われてしまったら……そんな不安はある。それでも――。


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