魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「ありがとうございます。私の能力をそんなふうに褒めていただけたのははじめてです」

「はじめて? 信じられないな。精神に作用する能力を持って生まれるアインホルン家のなかでも重宝されそうな能力なのに」


 そう口にしながら、ヴァーリックはオティリエの父親をちらりと見る。父親はハッと息を呑み、ほんのりとうつむいた。


【……言われてみればたしかに。なぜ私はオティリエを出来損ないだと決めつけているんだ? 使いようによってはこれ以上ないほどの切り札になっただろうに】

(……え? 今のお父様の声、よね?)


 心底不思議そうな父親の心のつぶやきを聞きながら、オティリエはとても驚いてしまった。彼がそんなことを考えるなんて信じがたい。嘘みたいだ。


「ところで、オティリエは今何歳?」

「え? えっと……十六歳ですけど」


 どうしてそんなことを尋ねられるのか疑問に思いながらこたえれば、ヴァーリックは目を見開いた。


「十六!? 本当に?」

「まあ……! きちんと食事はとれているの?」


 今度は王妃が尋ねてくる。

 オティリエは同年代の令嬢に比べて身長が極端に低い。肉付きだって当然悪く、ドレスで隠れた肘や膝は骨ばっている。あまりにも年齢不相応な姿に二人は心配をしてくれたのだろう。


< 28 / 330 >

この作品をシェア

pagetop