魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
***
次の日、オティリエは若干の気まずさを覚えつつ執務室に向かった。
(全然眠れなかったな……)
ヴァーリックの――求婚のことを考えていたらちっとも寝付けなかった。彼は昨日『返事は急がない』と言ってくれたけれど、一体どのぐらいの猶予があるのだろう? 王太子の補佐官として、彼の妃選びはオティリエの仕事の一つでもあるのだ。もしもオティリエが求婚を断ったら――そういうことまで考えて動かなければならない。
ため息を一つ、執務室のなかに入る。
ヴァーリックはまだ部屋にはいなかった。しかし、オティリエ以外の補佐官たちはいつになく早く出勤しており、彼女を見るなり「おはよう!」と満面の笑みを浮かべる。
【オティリエさん、多分まだ返事をしてないんだろうなぁ。一体なんて返事をするつもりなんだろう?】
【気になる……気になりすぎて今日は仕事にならないなぁ】
【オティリエさんが妃になったら補佐官としての仕事はセーブすることになるんだろうなぁ。妃には妃の公務があるものなぁ】
と、すぐに聞こえてくる心の声たち。オティリエは思わず目を丸くし、ムッと唇を尖らせる。
「皆さん……私に『聞こえてる』ってわかってますよね? どうせなら声に出してくださればいいのに」
わざわざ心のなかで尋ねられるから腹が立つ。オティリエの反応に、補佐官たちは苦笑を漏らした。
次の日、オティリエは若干の気まずさを覚えつつ執務室に向かった。
(全然眠れなかったな……)
ヴァーリックの――求婚のことを考えていたらちっとも寝付けなかった。彼は昨日『返事は急がない』と言ってくれたけれど、一体どのぐらいの猶予があるのだろう? 王太子の補佐官として、彼の妃選びはオティリエの仕事の一つでもあるのだ。もしもオティリエが求婚を断ったら――そういうことまで考えて動かなければならない。
ため息を一つ、執務室のなかに入る。
ヴァーリックはまだ部屋にはいなかった。しかし、オティリエ以外の補佐官たちはいつになく早く出勤しており、彼女を見るなり「おはよう!」と満面の笑みを浮かべる。
【オティリエさん、多分まだ返事をしてないんだろうなぁ。一体なんて返事をするつもりなんだろう?】
【気になる……気になりすぎて今日は仕事にならないなぁ】
【オティリエさんが妃になったら補佐官としての仕事はセーブすることになるんだろうなぁ。妃には妃の公務があるものなぁ】
と、すぐに聞こえてくる心の声たち。オティリエは思わず目を丸くし、ムッと唇を尖らせる。
「皆さん……私に『聞こえてる』ってわかってますよね? どうせなら声に出してくださればいいのに」
わざわざ心のなかで尋ねられるから腹が立つ。オティリエの反応に、補佐官たちは苦笑を漏らした。