魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「それで? 返事は決まったんですか?」


 と、エアニーが尋ねてくる。オティリエは一瞬迷ったのち「いいえ」と首を横に振った。


「それはどうして?」

「どうしてって……」


 オティリエがこたえようとしたそのときだ。ヴァーリックが執務室にやってくる。


「おはよう、みんな」

「おはようございます、ヴァーリック様」


 いつもと変わらない朝の挨拶。他の補佐官とともに頭を下げつつ、オティリエはチラリとヴァーリックを見る。と、ちょうどこちらを向いたらしいヴァーリックと視線が絡んで、オティリエはドキッとしてしまった。


【おはよう、オティリエ】


 慈しむような温かく優しい声。それだけでオティリエは涙が出そうになってしまう。


(私は……どうしたらいいんだろう?)


 自分の気持ちがわからない。オティリエはヴァーリックの笑顔を見つめつつ、ギュッと拳を握った。
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