魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「それは、どうして?」

「え? どうしてって……」

「ヴァーリック様がどれほどあなたを思っているか、わからないわけではないでしょう?」


 そう口にするエアニーの表情は苦しげだ。ヴァーリックがこれから感じるであろう痛みを、まるで自分のことのように感じているらしい。オティリエは「はい」と返事をしつつ、ほんのりとうつむいた。


「だったら、どうして悩む必要があるのです? ヴァーリック様は口にも態度にも心の声にすら出さないでしょうが、あなたの返事を待っています。……想いにこたえてほしいと。あなたが「結婚する」とこたえてくれるのを願っています」


 胸がきゅっと苦しくなる。オティリエは「そうですね」と返事をした。


「だけど、ごめんなさい。多分私は――自信がないんです」

「自信?」


 エアニーに尋ね返され、オティリエは「ええ」と相槌を打つ。彼は首を傾げながらそっと身を乗り出した。


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