魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
55.心からの
「お父様……」
オティリエはつぶやきつつ、少しだけ後ろずさってしまう。
最後に父親に会ったのはもう一年近く前のことだ。あのとき父親はオティリエに対して形だけの謝罪をしてくれた。すまなかったと。
けれど、彼が悪いと思っていなかったことは明白だったし、謝られたからといってすべてが帳消しになるわけではない。オティリエにとって父親は恐怖と悲しみ、苦しみの象徴だった。
(怖い……)
父親を見ることが。声を聞くことが。……オティリエに対する心の声を聞くことが。
彼がそこにいると思うだけで胃のあたりがキュッと痛むし、息が浅くなってしまう。逃げ出したい――そう思ってしまうのも無理はない。
「オティリエ」
と、ヴァーリックがそっとオティリエの肩を抱く。大丈夫だよとほほえまれ、オティリエはおそるおそる父親のことを見た。
「あの……」
なにを話せばいいのだろう? 会話らしい会話をしたこともないし、どうすればいいのかわからない。父親はずっと押し黙ったまま、オティリエのことを見つめ続けている。
オティリエはつぶやきつつ、少しだけ後ろずさってしまう。
最後に父親に会ったのはもう一年近く前のことだ。あのとき父親はオティリエに対して形だけの謝罪をしてくれた。すまなかったと。
けれど、彼が悪いと思っていなかったことは明白だったし、謝られたからといってすべてが帳消しになるわけではない。オティリエにとって父親は恐怖と悲しみ、苦しみの象徴だった。
(怖い……)
父親を見ることが。声を聞くことが。……オティリエに対する心の声を聞くことが。
彼がそこにいると思うだけで胃のあたりがキュッと痛むし、息が浅くなってしまう。逃げ出したい――そう思ってしまうのも無理はない。
「オティリエ」
と、ヴァーリックがそっとオティリエの肩を抱く。大丈夫だよとほほえまれ、オティリエはおそるおそる父親のことを見た。
「あの……」
なにを話せばいいのだろう? 会話らしい会話をしたこともないし、どうすればいいのかわからない。父親はずっと押し黙ったまま、オティリエのことを見つめ続けている。