魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「お父様、やめて! 頭を上げてください! これでは落ち着いて話しができません」

「しかし……」

「私はお父様の口からきちんと話を聞かせてほしいんです」


 オティリエはそう言ってまっすぐに父親を見る。涙でぐちゃぐちゃに歪んだ表情、オティリエと同じ紫色の瞳。生まれてはじめて父親から憎悪や嫌悪以外の感情を向けられて、正直なところ戸惑わずにはいられない。けれど、この機会を逃したら一生彼とはわかりあえないかもしれない。


「侯爵、オティリエもこう言っているんです。落ち着いて話しをしましょう」

「で、殿下……はい。承知しました」


 父親はアルドリッヒに背中をたたかれ、ゆっくりと身体を起こした。


「それで、どうしていきなりお父様が……? 最後にお会いしたときには……その、全面的にお姉様の味方をしていらっしゃいましたし、私のことをうとんでいたと記憶をしているのに」


 落ち着いた頃合いを見計らい、オティリエが話を切り出す。父親はウッと気まずそうな表情を浮かべたあと【なにから切り出せばいいか……】と考えあぐねている。


「うっ……」


 そうこうしている間に再び感情が昂ぶってしまったらしい。父親は声をあげて泣きはじめてしまった。


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