魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「殿下は少しずつ、何度も何度も時間をかけてお父様の魅了の影響を薄れさせいったんだ。それで、最近になってようやく完全に無効化することに成功したそうなんだけど……」

「ヴァーリック様が……? そんな! だけどそんなこと、ひとことだって……!」

「侯爵の名前を出したり会っていることを伝えたりしたら、オティリエが怯えてしまうと思ったんだ。さっきも侯爵を見るなりとても辛そうな表情をしていたし、できる限り嫌な思いはさせたくなかったから」

「ヴァーリック様……」


 オティリエの瞳に涙がたまる。ヴァーリックの優しさ、深い愛情を感じて、心がたまらなく温かかった。


「婚約披露までの間になんとか侯爵の魅了を解きたいと思っていたんだ。間にあってよかったよ。もしかしたらオティリエはそんなことを望んでいなかったかもしれないけど」


 ヴァーリックの言葉にオティリエは首を横に振る。それから、両手に顔を埋めて泣きじゃくった。


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