魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「私……別に謝ってほしかったわけじゃなかったんです。なにをしたって過去が消えるわけじゃないし、お父様はいわば被害者ですもの。だけど……」
ダメだ、涙が止まらない。胸の中のわだかまりが溶けてなくなっていくかのよう。絶対、なにがあっても消えないと思っていたのに……。
「お父様、本当に? 私のことを心から憎んでいるわけではないのですか? ……お姉様と同じように、娘だと思ってくださいますか?」
「……! もちろんだ」
それまで押し黙っていた父親がようやく口を開く。彼はオティリエの側までやってくると、そっと彼女の手を握った。
「これから妃になるオティリエに向かって、今さら父親ヅラできるだなんて思っていない。しかし私はおまえのことを……オティリエの幸せを心から願っているし、できる限りのことをしてやりたいと思っている。本当だ。信じてほしい」
優しく慈しむような眼差し。家族のぬくもり。それらはオティリエがずっとずっとほしくてたまらないものだった。彼女は「お父様」とつぶやきつつ、瞳を細める。
(もう十分だわ)
辛かった記憶が完全に消えるわけではないが、オティリエの心はこれ以上ないほどに救われた。オティリエさえ望めば、これから先父親と新しい関係を築いていくことも可能だろう。ぜんぶぜんぶ、ヴァーリックのおかげだ。
ダメだ、涙が止まらない。胸の中のわだかまりが溶けてなくなっていくかのよう。絶対、なにがあっても消えないと思っていたのに……。
「お父様、本当に? 私のことを心から憎んでいるわけではないのですか? ……お姉様と同じように、娘だと思ってくださいますか?」
「……! もちろんだ」
それまで押し黙っていた父親がようやく口を開く。彼はオティリエの側までやってくると、そっと彼女の手を握った。
「これから妃になるオティリエに向かって、今さら父親ヅラできるだなんて思っていない。しかし私はおまえのことを……オティリエの幸せを心から願っているし、できる限りのことをしてやりたいと思っている。本当だ。信じてほしい」
優しく慈しむような眼差し。家族のぬくもり。それらはオティリエがずっとずっとほしくてたまらないものだった。彼女は「お父様」とつぶやきつつ、瞳を細める。
(もう十分だわ)
辛かった記憶が完全に消えるわけではないが、オティリエの心はこれ以上ないほどに救われた。オティリエさえ望めば、これから先父親と新しい関係を築いていくことも可能だろう。ぜんぶぜんぶ、ヴァーリックのおかげだ。