魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「……本当に?」

「え?」

「今のオティリエを見て、君は本気でそんなことを思うの?」


 ヴァーリックはそう言って、オティリエをほんの少しだけ前に出す。その途端、イアマの唇がワナワナと震え、瞳が大きく見開かれた。


【なによ……一体なんなのよ! 一年前とはまるで別人じゃない!】


 艷やかな肌に美しい髪の毛、ガリガリだった身体はずいぶん肉付きがよくなり女性らしくなったし、身長だって数センチは伸びている。もともと整った顔立ちだったがより愛らしく美しく成長したし、凛と洗練された立ち居振る舞いに人々は感嘆のため息を漏らすだろう。ドレスの着こなしも見事なもので優雅さと品のよさを感じさせる。少なくとも、イアマに罵倒されるいわれはまったくなかった。


「見た目だけじゃない。オティリエはたった一年で、補佐官として優秀な実績をあげてきた。城内――国中の誰もが認める素晴らしい働きぶりだ。誰にも無能だなんて言わせない。……言えるはずがないんだ。それに、彼女の優しさに救われた人が大勢いる。僕だってそのうちの一人だ。それなのに『誰にも認められない』だって? ふざけるのもたいがいにしてくれ」


 いつも穏やかなヴァーリックらしからぬ強い口調。イアマがグッと歯噛みをする。


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