魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
(……ヴァーリック様)


 ドクン! と身体が脈打ち、オティリエに意識と感覚が戻ってきた。しかし、そのあまりの苦しさに彼女はもがき苦しむ。


「オティリエ! オティリエ、しっかりするんだ!」


 ヴァーリックがオティリエの身体をしっかりと抱き起こす。彼はオティリエの頬を叩きながら、必死に呼びかけ続けていた。


(ヴァーリック様が私を呼んでいるわ)


 戻らなければ。大好きなヴァーリックのもとに。

 だけど、頭の中では今もイアマが叫んでいる。あんたなんかいらない! 消えてしまえ! いなくなってしまえ! と何度も何度も。
 けれどそのたびにヴァーリックの声がオティリエのことを引き戻す。


【僕にはオティリエが必要なんだ】


 彼の声が、心が、オティリエを優しく力強く温める。――オティリエ自身の声が段々大きくなっていく。


(私は消えない。生きたい。もっともっと!)


 ヴァーリックとともに!

 だってオティリエは彼を幸せにすると約束したのだ。ここで消えるわけにはいかない。絶対、絶対にヴァーリックのもとに戻るんだ!


 カハッ! と大きく息を吐きながらオティリエは目を覚ました。荒い呼吸。視界はまだぼやけていてよく見えない。


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