魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「エスコートをしてみて改めて思った。君の痩せ方は尋常じゃない。満足に食事がとれている人間のものではないだろう。原因は? 父親? それともイアマ嬢?」

「い……いえ、私はそんな」

「安心して。決して悪いようにはしないから」


 ヴァーリックの言葉に、オティリエはちらりとイアマを見る。彼女はまだ王妃と父親と談笑をしているようだ。距離が離れているから互いの声は聞こえない。オティリエは小さく息をついた。


「物心ついたときから父も姉も私と食事をしたがらなくて……。私――二人に嫌われているんです」


 誰かに嫌われていると打ち明けることは情けない。自分が『無価値な人間』だと認めているかのようで、とても辛く勇気の必要なことだった。


「それから自分の部屋で食事をとるようになったんですけど、私、使用人たちにも嫌われていて。段々食事を取りに行くのが嫌になって、自主的に回数を減らしていたんです」


 事情を打ち明けながらオティリエの心は沈んでいく。気まずくてヴァーリックの顔を見ることなどできなかった。


「なるほどね……そういうことだったのか」

「ですからこれは、家族ではなくて私自身の問題なんです。私がもっと強ければ、毎食きちんと食事をとれる環境なんです。悪いのは全部私で……」

「それは違うよ」


 ヴァーリックが力強く否定する。オティリエは思わず顔を上げた。


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