魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
【魅力が足りないって本当に気の毒だわ。大体、盗られるのが嫌なら、夜会に一緒に出席して他の女に見せびらかしたりせず、大事に隠し込んでいけばいいのよ】

(え……?)


 もしかして、原因はイアマにあるんだろうか? 彼女が婚約者のいる男性を魅了し、彼らの結婚を意図的にダメにしているのだとしたら――大変なことだ。


【やっぱりそうだ。彼女の能力はターゲットと視線を合わせる必要があるみたいだね】

(視線?)


 すると、ヴァーリックの心の声が聞こえてきた。オティリエは背後からそっと彼の表情をうかがう。


【もちろん、イアマ嬢は美しい容姿の女性だけど、存在そのもので相手を魅了し、操っているわけじゃない。だから、彼女の姿を見た人間全員が彼女に魅了されるわけではないんだ。それから、たった一度視線を交わした程度なら、そこまで大きな影響はない。相手を意のままに操るためにはある程度の時間か回数が必要みたいだね。おそらくだけど、効果も永続するわけではないと思う】

(そうだったんだ……)


 十六年間同じ屋敷で育ってきたというのに、オティリエはイアマの能力についてなにも知らなかった。しかし、ヴァーリックの立てた仮説はとても理にかなっている。マナー講師の様子がおかしくなったのは講義をはじめてから数日後のこと。おそらくはイアマに接触したあとだろう。それに、この会場にいる人間全員がイアマに魅了されている様子はない。ヴァーリックはほんの少しの間に、それらの事実を見抜いたのだろう。


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