魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「ねえ、オティリエ嬢。先ほど君は僕をすごいと言ってくれたね」
「はい。私は殿下が羨ましい……本当に素晴らしい能力だと思っています」
どうしてそんなことを言われるかわからず、オティリエは少しだけ首を傾げる。
「ありがとう。だけど幼い頃の僕は、自分の能力が好きじゃなかったんだ」
「え?」
驚きのあまりオティリエは思わず聞き返してしまう。ヴァーリックはそっと瞳を細めた。
「好きじゃなかったんですか? ……本当に?」
「本当に。だって、僕の能力って、自分自身でなにかができるわけじゃないんだよ? 母上なんて未来を視る能力があって、立派に国を守っているというのに、僕は他人の能力がなければなにもできない。腹立たしくて、悔しくて、拗ねていた時期がかなり長かったんだ。けれど、ないものねだりをしても仕方がない――ある日唐突にそう気づいてね。方向性を変えることにしたんだ」
「方向性、ですか?」
「そう。ないものは集めればいい。アインホルン家に限らず、僕はいろんな才能のある人たちを自分の元に集めることにしたんだ」
どこか懐かしそうなヴァーリックの表情。オティリエは彼をまじまじと見つめた。
「才能のある人たちを集める……」
つぶやきながら、オティリエは胸をそっと押さえる。彼女は今、これまでに感じたことのない焦燥感を感じていた。本当は心に蓋をして見なかったふりをしてしまいたい。――けれどそれではなにも変わらない。オティリエは意を決して、自分の感情を覗き込んだ。
「はい。私は殿下が羨ましい……本当に素晴らしい能力だと思っています」
どうしてそんなことを言われるかわからず、オティリエは少しだけ首を傾げる。
「ありがとう。だけど幼い頃の僕は、自分の能力が好きじゃなかったんだ」
「え?」
驚きのあまりオティリエは思わず聞き返してしまう。ヴァーリックはそっと瞳を細めた。
「好きじゃなかったんですか? ……本当に?」
「本当に。だって、僕の能力って、自分自身でなにかができるわけじゃないんだよ? 母上なんて未来を視る能力があって、立派に国を守っているというのに、僕は他人の能力がなければなにもできない。腹立たしくて、悔しくて、拗ねていた時期がかなり長かったんだ。けれど、ないものねだりをしても仕方がない――ある日唐突にそう気づいてね。方向性を変えることにしたんだ」
「方向性、ですか?」
「そう。ないものは集めればいい。アインホルン家に限らず、僕はいろんな才能のある人たちを自分の元に集めることにしたんだ」
どこか懐かしそうなヴァーリックの表情。オティリエは彼をまじまじと見つめた。
「才能のある人たちを集める……」
つぶやきながら、オティリエは胸をそっと押さえる。彼女は今、これまでに感じたことのない焦燥感を感じていた。本当は心に蓋をして見なかったふりをしてしまいたい。――けれどそれではなにも変わらない。オティリエは意を決して、自分の感情を覗き込んだ。