魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「ヴァーリック殿下、いつか私がもっと強くなれたら――きちんと自分の力に向き合うことができたら、殿下にもう一度お目通り願えますか?」


 緊張で声が震えてしまう。
 こんなふうに自分の気持ちを誰かに伝えるのははじめてのことだった。これまでだったら『絶対無理』だと断じただろうに、今はなにもせずに諦めたくない自分がいる。


「もちろん。楽しみにしているよ」


 ヴァーリックはそう言ってオティリエの手を握ってくれた。彼の手のひらは大きくて温かく、力強い。空っぽだったオティリエの心と体に勇気が満ちてくる。オティリエが笑うと、ヴァーリックの頬がほんのり染まった。


【……可愛いなぁ】

「えっ」


 今のはオティリエに向けられた言葉だろうか? ヴァーリックの能力について説明している最中は彼の心の声はちっとも聞こえてこなかった。オティリエを混乱させないよう、彼女の能力をあえて弾いてくれているのだろうと思っていたのだが。


(もしかして、わざと聞かせたのかしら? 可愛いって。私を元気づけるために? ……それとも、殿下は私が『聞こえていること』にまだ気づいていらっしゃらない?)


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