魅了持ちの姉にすべてを奪われた心読み令嬢は、この度王太子の補佐官に選ばれました!
「ねえあんた、どうしてヴァーリック殿下にわたくしの能力が効かなかったか知っているんでしょう? 教えなさい?」
「知って……どうなさるおつもりなんですか?」
イアマが再びオティリエに掴みかかる。息苦しさに喘ぎながらオティリエはじっとイアマを見上げた。
「決まっているでしょう? あの腹立たしい男を魅了して、わたくしの言いなりにしてしまうの! あんなふうにバカにされたのははじめてだもの。このままじゃわたくしのプライドが許さないわ! ああ、早くあの男が跪いて許しを請う姿が見たい! そして、妃になってほしいって懇願させるの! 想像するだけでゾクゾクしちゃう」
悦に入った表情を浮かべ、イアマが瞳をギラつかせる。彼女はヴァーリックを籠絡できると信じて疑っていないのだろう。
(ヴァーリック様)
彼ならきっと大丈夫――そう思うけれど、イアマがヴァーリックに接触することを思うとオティリエの胸が苦しくなる。万が一魅了を防ぎきれなかったら――。彼に傷ついてほしくない。そんなの、絶対に嫌だ。
「やめてください」
「…………は?」
ドスの効いた声がオティリエの部屋に響き渡る。これまでのオティリエなら恐怖でひとことも発せなかったし、すぐに逃げ出してしまっただろう。けれど、オティリエは震える足を必死に踏ん張り、イアマをまっすぐに見返した。
「殿下は私を守ってくださった恩人です。危害を加えることは許しません」
「ふふっ……あはは! 許さないですって? 笑わせないで。あんたになにができるって言うのよ! 部屋のなかに引きこもって鬱々としているしか能のないあんたが! このわたくしを止められるわけがないでしょう?」
「私にはお姉様の心の声が聞こえるから……だから!」
オティリエが言う。イアマがピクリと反応を返した。
「知って……どうなさるおつもりなんですか?」
イアマが再びオティリエに掴みかかる。息苦しさに喘ぎながらオティリエはじっとイアマを見上げた。
「決まっているでしょう? あの腹立たしい男を魅了して、わたくしの言いなりにしてしまうの! あんなふうにバカにされたのははじめてだもの。このままじゃわたくしのプライドが許さないわ! ああ、早くあの男が跪いて許しを請う姿が見たい! そして、妃になってほしいって懇願させるの! 想像するだけでゾクゾクしちゃう」
悦に入った表情を浮かべ、イアマが瞳をギラつかせる。彼女はヴァーリックを籠絡できると信じて疑っていないのだろう。
(ヴァーリック様)
彼ならきっと大丈夫――そう思うけれど、イアマがヴァーリックに接触することを思うとオティリエの胸が苦しくなる。万が一魅了を防ぎきれなかったら――。彼に傷ついてほしくない。そんなの、絶対に嫌だ。
「やめてください」
「…………は?」
ドスの効いた声がオティリエの部屋に響き渡る。これまでのオティリエなら恐怖でひとことも発せなかったし、すぐに逃げ出してしまっただろう。けれど、オティリエは震える足を必死に踏ん張り、イアマをまっすぐに見返した。
「殿下は私を守ってくださった恩人です。危害を加えることは許しません」
「ふふっ……あはは! 許さないですって? 笑わせないで。あんたになにができるって言うのよ! 部屋のなかに引きこもって鬱々としているしか能のないあんたが! このわたくしを止められるわけがないでしょう?」
「私にはお姉様の心の声が聞こえるから……だから!」
オティリエが言う。イアマがピクリと反応を返した。